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第14章 予定外



「相馬……」

 相馬はぷいとそっぽを向いた。
うわ、これは勘違いなんかじゃない。
怒ってる……。



「ごめんなさい。金曜日に続いて今日まで手伝わせて」

「違う」

「……じゃあ」



 もうひとつ思いつく心当たりを、口にしてみる。

「ごめんなさい、今日は相馬が先約だったのに、こんな仕事引き受けちゃって……」



 今度はすぐに否定が飛んでくることはなかった。
沈黙のあいだ私が身を縮めて待っていると、やがて大きなため息が聞こえてきた。



「悪い。俺、機嫌悪かった」

「ご、ごめん、」

「そうじゃなくて。今日は朝から機嫌悪かったから」



 それは、最近相馬を振った誰かさんのせい? 
それとも、土曜日何も言わずに帰った私のせい?



「話、していい?」

 相馬が唐突に言った。

「あ、うん。ここで?」

「長くかかる話じゃないから」



 それでもわざわざお昼休みや立ち話ではなく、終業後を指定してきていた理由は、内容を聞いてすぐに察した。
人に聞かれたくない話だったからだ。



「俺、人事行って、ぜんぶ話してこようと思って」

 頭が真っ白になる。

「このまま霧野の隣座ってるの、ちょっとしんどいわ」


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