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第15章 退勤



「……それは」

 引き止めなきゃ。
言い返さなきゃ。
必死で頭をフル回転させる。
そんな私とは対照的に、相馬は存外のんびりしているように見えた。
テーブルを空にした相馬は、私に資料の束を手渡すと、帰り支度を始めた。



「霧野だって嫌だろ? 俺がずっと隣に座ってるなんて」

 内容はぜんぜんのんびりしていないのに。

「嫌って……どうして? 私は別に嫌じゃないよ」



 相馬は横目で私をちらりと見て、すぐに目を逸らして、ふーん、と言った。

「変わってんね」

「変わってる……かな?」

「泣くほど、嫌だったんだろ」



 どきりと心臓が止まりそうになる。

「そ……それは、」

「一発で飛ばされれると思うんだよね。霧野のことレイプしましたって言ったら」



 相馬の口から出た強烈な言葉に、私は慄いた。

 相馬は――そう、思ってるの?


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