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第15章 退勤



「まあ、そしたらたぶん霧野のほうにも事情聴取とかあるだろうから、事前にことわっとこうと思って」

「い……嫌だ」



 私は相馬みたいに口が上手くないし、言い争いは苦手だけど、彼を引き止める糸口は、ここしかないと思った。
それに、実際――嫌だった。



「嫌だよ、なんで知らない人に、そんな話しなきゃいけないの」

 相馬が何も言わないうちに、畳み掛ける。

「私と相馬のことぜんぜん知らない人事の人に、何を……したかとか、されたとか話さなきゃいけないの? 知られなきゃいけないの?」

「……霧野……」

「部長とかも知ることになるの? そしたら私、もうずっと、そういう……ことされた人って目で見られるの? そう思われながらずっと働くの?」



「ごめん、俺、」

 食い気味に相馬が割り込んできて、私はようやく止まった。


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