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unbalance
第16章 拒絶
気が立っている原因は寝不足なんじゃないかと言われれば、百パーセント違うとは言い切れなかった。
この土日、ほとんど寝られなかったのは事実だった。
寝不足で頭が回っていないんだったら、今は動くべきではなかった。
そこまで考えが至らないほど、頭が回っていなかった。
俺は霧野の手を引っ張って家に帰った。
靴を脱がせて早々に、廊下の壁に彼女を閉じ込めた。
彼女の両手首を取って顔の両脇の壁に固定し、足も絡めて動きを封じる。
今朝までエアコンをつけていた部屋は、微かに冷気が残っていて、けれどじんわりと熱が支配し始めていた。
「……相馬?」
霧野の窺うような問い掛けを無視して、顔を近づけてキスをしようとする。
直前でやっぱり日和って、彼女の顔の横の壁に額を押しつけた。
ここで嫌がられたらもう再起不能だ。
身体は許すがキスだけは本当に好きな人としかしたくない、という女と昔一夜を過ごしたことがあった。
俺は彼女が泊まりを拒否しなかった時点でもう付き合っているつもりでいた。
彼女とはそれきり会うことはなかった。
記憶が目の前の霧野と重なる。
無意識に、霧野の手首を握る手に力がこもる。
いいんだ、別に、それでいい。