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unbalance
第18章 嘘
よく考えたら、人の顔にお化粧するなんてはじめてだ。
顔全体に塗ると逆に浮くかも。
意外と肌の色が濃いから、道具は慎重に選ばないと。
外出て汗かいてもできるだけ綺麗に保たれるように……。
……気づけば夢中になっていた。
ちょっとはクマが薄く見えたかな、と手を止めたとき、相馬が目を閉じたままぽつりと言った。
「悪いな。迷惑掛けて」
「……それは、こっちの台詞かな」
私のせいなのはわかっているから、私にできる埋め合わせはしたい。
訪問に代わりに行ってあげることはできないけれど、だったら私にできることは、これぐらい。
ただ――、
「まあ、それはそう」
相馬が不意に笑って、ちょっと、顔動かさないでよ。
じゃなくて――その台詞は、聞き捨てならなかった。
「私はお互い様だと思ってるよ」
わざと語気を強めて言い切った。相馬は、
「そう?」
と、ほんの少し笑みを引っ込めた。
「そうでしょ?」
「じゃあ、ひとつ聞いていい?」
相馬がゆっくりと目を開ける。
「何で、嘘ついたの?」