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unbalance
第18章 嘘
……嘘?
「嘘って何? 何の話?」
「だから、嫌じゃない、とか」
ああ、嘘、だと思われてるのか。
当然だ。
「嫌じゃないのは本当だよ」
「じゃあ何で泣いたの」
それも当然の問いだった。
けれど、その質問には答えられない。
それに答えたら――ほぼ告白だ。
「……相馬にもいろいろ事情があるように、私にもいろいろあるのよ」
「いろいろって何だよ」
「言いたくない」
「それはないだろ」
「なに? 駄目なの? 言いたくないことあっちゃ」
「駄目ってわけじゃないけど」
お互いに、だんだん声が大きくなるのを止められなかった。
「でも、納得できねえよ」
「いいじゃん、聞かないほうが相馬のためだよ」
「何だよそれ――」
メイク道具を構えた私の右手首を、相馬がぱっと掴むのを、避けられなかった。
「痛っ……」
反射的に声を上げた。