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unbalance
第18章 嘘
別に、いいじゃない、と、本当は言ってやりたかった。
恋人でも、好きな子でもない、身体だけの関係の女に、すぐ消える傷を作ったぐらい、大したことじゃないよ。
心から、それで相馬が慰められるならそう言ってあげたかった。
相馬がそんなことで慰められるわけがないこともわかっていたし、
私にとっては嘘偽りのない本音だけれど、客観的に聞いたら自虐的に聞こえることもわかっていた。
自分が言葉が下手なのはわかっている。
相馬に上手く伝えられるとは思えなかった。
「とりあえず……続き、していい?」
私にできるのは、会話を畳むことぐらいだった。
相馬が素直に目を閉じる。
無防備に私に顔を差し出す。
――もし彼を慰めるキスをできるのが、私なら、よかったのに。
私はチークのついた指で、彼の冷たい頬にそっと触れた。