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unbalance
第18章 嘘
相馬がぎょっとして手を離す。
しまった。
私が手を引っ込める前に、相馬が私のカーディガンの袖を捲った。
まだ消えきっていない痣を、相馬に見られたくなかった。
「……これ……」
「違うの、痛いとかじゃなくて。触るとちょっと痛いけど、でも見た目だけだから。中はぴんぴんしてるから」
慌てて手首をくるくる捻って、元気アピールをしてみせる。
相馬のショックは、そんなことでは拭えなかった。
ああ、だから見せたくなかったのに。
「……言ってくれれば……」
相馬が私の手首の運動を、両手でそっととめさせる。
手首の内側を、触れているか触れていないかわからないような力加減で撫でる。
私は正直に進言する。
「言ったよ、その場で。でも、やめてくれなかった」
相馬がぐっと息を詰まらせて、
「ごめん……」
私の手首から手を離して、膝の上でぎゅっと握った。
それ以降、唇を噛んで何も言わなくなった。
「……時間が経てば消えると思うし、日常生活に支障ないし。私は何とも思ってないよ」