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第19章 軽口



「し……したよ!」

 顔を離すと、ぱっと相馬が目を開けた。
うわ、今見ないでよ。
顔色が正常な自信がない。



「え、……まじ?」

 相馬が目を見張る。二度も言わせないで。



「ちょ、わかんなかった。指じゃなく?」

「指じゃないよ! だから、いいでしょ」

 信じてくれてもいいでしょ。嫌じゃないって。

「わかんなかった! もう一回!」

「ば……ばっかじゃないの!?」

「頼むから!」



 相馬が居住まいを正して目を閉じる。もうヤケだった。

「あー、もう!」



 彼の頬の同じところに、今度はぜったいにわかるように、と唇で挟んで吸ってみる。
ちゅ、と思いのほか露骨な音がして、私のほうがびびって肩を竦ませる。



「霧野……っ」

 その肩を掴んだのは相馬だった。


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