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第19章 軽口



 そういう軽口を叩かれるのは、珍しいことじゃない。
お礼はキスでいいよとか、ハグしてくれたら手伝ってあげてもいいよとか。

もちろんしたことはないし、相馬だって冗談で言っているのはわかっている。
セクハラ言ってもいい相手だと認識されているのは癪だけれど――



「嫌じゃないならできるよなあ」



 何だかいつもとはちょっと雰囲気が違う気がした。

本気でするだなんて、されるだなんて思っていないいつもの冗談と違って、本当に――



 しちゃう?



 魔が差した、と言ってもいい。
大人しく目を閉じている相馬の頬に、私は顔を近づけて、唇を触れさせた。



 あ、これ、やばい。

 寝てる相馬にこっそりとかじゃなくて、ちゃんと許可もらって――



 かっと頬が熱くなる。けれど、もう遅い。

 私、相馬にキス、しちゃった。とうとう。


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