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unbalance
第20章 駐車場
「車でミラー見て、すげーって思った。女って毎朝こんなことやってんのな」
私も社用車で外出の用事を終えて、資料作りが残っていたので会社に戻った午後五時。
会社に車を置いて退勤したばかりの相馬と、会社の裏の駐車場でばったり会った。
相馬の目元は、コンシーラーが汗で少し浮き始めていたけれど、汚く崩れているというほどではなかった。
「霧野に直してもらう前の顔で先方に会うのはさすがにまずかったわ。ありがとう」
上手くいったようでほっとして、思わず顔が綻ぶ。
「お役に立てたようで何より」
我ながら社交辞令みたいな返事をしてしまったけれど、でも、本心だった。
「帰ったらクレンジングするんだよ」
「ああ、えっと……化粧落としね」
そうだよな、普段使わないもんな。
「コンビニとかで、汗拭きシートみたいな感じでちっちゃいお化粧落としシート売ってると思うから。余って要らなかったら私にくれてもいいし」
「わかった」
これで話は終わりかと思っていた。すっと解散できるかも、と。
甘かった。
「さっきの話の続き、していい?」