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unbalance
第20章 駐車場
相馬が急に真面目な顔になって身構える。
「つ……続き? 続きって?」
「後で話そうって言ったろ」
相馬はそのまま駐車場の隅の日陰に向かってゆったり歩く。私は慌てて後を追う。
「私には話すことなんて、」
「霧野もブラックでいい?」
「あ、うん、ありが……」
しまった、と思ったときには、もう相馬は自販機で缶コーヒーを買ってしまっていた。
ほい、と冷たい缶を渡されて、
「悪い。ちょっと暑いけど、手短に終わらせるから」
こうなっては――仕方がない。
缶コーヒーを受け取ってしまったからには、付き合わないわけにはいかなくなった。
こういうところ、この人は本当に巧くて……狡い。
夕方の日陰とはいえ、じっとしていても汗をかく季節はまだまだ終わりそうになかった。
街路樹で蝉も元気に鳴いていた。
しかし、エアコンの効いた涼しい社内に、こんな話ができる場所なんてないのは確かだった。