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第20章 駐車場



「……なん、で……」

「事後で泣かれるの、かなりしんどいんだよ」

「も……もう泣かないから!」



 私は顔を上げて相馬を見た。
相馬とばっちり目が合った。
キスすらできそうな距離。
私を値踏みするような目。



「……今日の残業、何時まで?」

「え、えっと……八時ぐらいには終わる予定、」

「それ、どうしても今日じゃなきゃ駄目なの?」

「締め切り自体は週末だけど……明日と明後日はほかにやることがあって……」

「明日俺が手伝うっつったら今日帰れる?」

「た、たぶん」



 今まで、資料は一人で作るしかないものだと思っていた。
先週の金曜日に相馬に手伝ってもらって、人に頼れる部分がかなりあることと、手伝ってもらえばずっと早く終わることをはじめて実感した。



 相馬が私の背中からそっと手を外した。

「退勤してこい。ここで待ってる」



 私は頷いて、缶コーヒーの残りを一気に飲み干すと、缶をゴミ箱に放り込んで、小走りで会社に戻った。


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