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unbalance
第20章 駐車場



 そうだ。
抵抗しなきゃ。

相馬はそんなに強く私の身動きを取れなくしているわけじゃない。
胸を押し返せば、簡単に離れられる。

だったら、そうしなきゃ。離れなきゃ。



 相馬の体温が心地いい。
心臓がどくどく速いリズムを刻んでいる。
あの夜の記憶が蘇る。

半ば強引に私を押し倒す腕。
それでも頬を優しく撫でてくれる、意外にごつごつした指。
私を気持ちよくさせようと、敏感なところを探る柔らかい舌。
まるで私を求めているかのように名前を呼ぶ声――。



 その声と同じ声が、

「それとも、セフレになる?」

なんて言うから。



 いつものセクハラを酷くしただけの冗談、で終わらせられたはずだった。
ばーか、で済むはずだった。



 相馬の体温で、ぐずぐずに融かされる。



 彼の腕の中でただ俯いた私を、彼は頷いたと勘違いした。
頭上で鋭いため息が聞こえて、そしてその次の言葉は、



「俺は、嫌だよ」



 ぐさりと私の胸の傷に刺さった。


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