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第21章 軛



 相馬の家に入って、廊下を部屋のほうに向かう前に、相馬に鞄を取り上げられて、後ろから抱き竦められた。



「……霧野」

 一気に空気が変わる。



 あれから、私も急いで退勤して駐車場の相馬と合流し、相馬が腹減ったと騒ぐので、ごはん屋さんに寄った。
相馬の家を通り過ぎて、さらに会社から遠ざかったところにある、小さな個人の定食屋。

会社の人にばったり出会わないようなお店を選んでくれたのだろうけど……本当によかったんだろうか。

店を出る直前、私がお手洗いを借りているあいだ、相馬は店主さんとお喋りしていたようだ。
個人的に行くお店で店員さんや他の常連客と仲良くなる、なんて、私はフィクションだと思っていた。
すごいなと思うと同時に、そこまで付き合いの深い人たちに、私といるところを見られてもよかったのか不安になる。

彼女だと勘違いされないだろうか。
まして、セフレですと紹介するわけにもいかないだろうし。



 もちろん、私が口を出すことではないので黙っているけど。


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