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第25章 台詞



「……ごめん、最後……痛かった?」



 相馬が自分自身を私から抜きながら言う。
私は倦怠感で床に崩れ落ちそうになるのを、何とか洗面台に手をついて踏みとどまる。
相馬がさっと私の腰を抱きかかえて支える。
私は自分の力で立とうとする。



「大丈夫?」

 相馬が私にそう聞く声は優しくて、ああ、うん――誰にでも優しいんだ、こいつは。

 知ってたよ、それくらい。

 だって私が相馬を嫌いなのは、そういうところだもの。



 きっと彼は――盛り上がるためなら、相手が誰であれ、好きとか言えるんだ。
その場のノリとして。心のない台詞として。



 彼だって、私がわかっていることを前提に、“台詞”を口にしているはずだ。
彼が失恋直後であることを、私が知っていると、彼は知っているのだから。

だから、私は勘違いなんてしない。
馬鹿な期待をしたりもしない。
迷惑な女にはならない。

私は、ただの――セフレなのだ。彼にとっては。



 もちろん、私にその気はない。
これで最後。こんな惨めな思いは、もうこれで本当に最後だ。


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