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第25章 台詞



 期待しないとか言っておいて、今さら傷ついている自分に吐き気がする。

馬鹿みたい。

彼が名前を呼んでくれることにだって、大した意味はなかったのだ。
彼は、誰でも名前が呼べるんだ。
雰囲気を作るためなら、舞台をセッティングするためなら、その気になるためなら、相手をその気にさせるためなら、好きでもない相手でも名前が呼べる。
好きとか適当なことが言える。



 そんなツクリモノの言葉を吐かなきゃその気になれないなら、はじめから、何もしなきゃいいのに。

 本当に、嫌いだ。



 もし――もし万が一、その「好き」と言うのが本当で、失恋で弱ってるところに体の関係を持ってしまったから好きになったとか言うのなら、それはそれで反吐が出るし。

 あーあ。もう、ぜんぶどうでもよくなってきた。

 帰ろ。



「霧野、だいじょう――」

「大丈夫、ありがとう」



 私の体を支えようと手を伸ばす彼を、やんわりと断る。
やめてよね。恋人でもないくせに。
私は自分の足で何とか立ち上がると、床に捨てられたブラウスと下着を掻き集めた。


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