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unbalance
第25章 台詞
「……ううん」
残業していたらきっとこの時間だっただろうと思うと、夜ごはんが済んでいるだけ早いほうだった。
相馬の家に行くと決めたのは私だし。
「送ってくれてありがと」
「気をつけて」
「うん」
――名残惜しいなんて、言える立場ではない。自分から拒絶したのだ。
「じゃあ」
私は相馬に背を向けて歩き出した。
次の角を曲がるときにちょっとだけ後ろを振り返ると、相馬がまだ立ってこっちを見つめていて、
――やめてよ。
相馬がそんな、本当に恋人みたいなことするから。
私を大切にしているような振りをするから。
体だけの関係なんて、やることやったらあとは放り出しておけばいいのに。
私は歩調を速めて角を曲がると、駅に向かった。