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unbalance
第29章 約束



 疲れ切った顔で電車に乗っている。

 疲れ切っているのは体力ではなくて、精神的に。



久々にがっつりと接待をして、顔の筋肉が引きつるほど偽物の笑顔を作った。

別に特段パワハラを言われたり、セクハラされたわけではない。
むしろ、皆さん私の資料を褒めてくださって、労ってくださって、優しかった。

私が極端に会食が苦手なだけだ。



 営業、向いてないなあ……というのは新人のころからわかっていて、けれど、何だかんだ今も辞めていないことに、特に理由はない。
日々を必死に生きているうちに、今に至ってしまっただけだ。



 私だけ帰りの路線が違って、駅で解散できたのはラッキーだった。

 何はともあれ、今週もこれで終わり。
土日は休みだ。
ほっと息をつきながら、私は何の気なしに、社用スマホを見た。



 一件の通知が入っていた。

チャットだった。
会食の直前に、未読の通知はないことを確認したはずだった。
こんな時間に何だろう、とスマホを開きながら、でも送り主は、だいたい予想がついていた。


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