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第30章 個室



 頬杖をついてこちらをにやにやと眺める相馬が――いつも通りで、

「ばか」

 軽くあしらう。



いつかそんな未来があったら、なんて一瞬考えてしまった。

こいつにとっては、ただの冗談だ。

「やめなって言ったでしょ、そういうの――」

 そう自分に言い聞かせようとしたのに、



「霧野が即答オーケーしてくれると本気で思ってるわけじゃないけど、でも、霧野にしか言わないよ」



 相馬が頬杖をついたまま不満げな顔をするから、なんて答えればいいかわからなくなる。



「そ、それは……」

 しどろもどろになっていると、



「……悪い。酒が来たらにしようか、この話」



 自分で始めたくせに相馬は自分で切り上げて、目を逸らして鼻の頭をこする。

「……うん」

 もちろん私には、そこに唱える異などなかった。


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