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第30章 個室



「みんなそうでしょ。仕事の飲み会なら、駅前のもっとでかい店行くし」

 確かに、駅とは反対方面だし、なかなかここまで来ようとは思わないかもしれない。
けれど逆にいえば、駅までが遠いから、大型商業施設やチェーン店に侵食されずに残っているのだろう。

さっき見かけた他のお客さんたちも、仕事上がりのサラリーマンというよりは、地元の常連さんっぽかった。
向こうでマスターさんと何か親しげに喋る声が聞こえる。

 駅前のごみごみした雰囲気の中ではこのお店は作れない。



「街も、オフィス街かと思ってたら、このへん割と住宅街だし。意外と公園とかあるんだね」

「駅から離れるとね」



 駅からこのバーに辿り着くまでのあいだに、小さな公園の横を通った。



「頑張って歩けば、別の路線にも乗れる」

 相馬が今来た方角と逆を指さしながら言う。



「へえ、住みやすそうじゃん」

「お、じゃあ一緒住む?」


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