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第30章 個室

「以上」



　私が固まっている間に、相馬がぐいっとビールを煽る。

そのまま一気に半分も飲み干して、

「あ、霧野ももう飲んでいいよ」

「な、なんで」

「なんでって……もう素面で聞いてほしい部分は終わったから」



　そうじゃなくて！

「すぐ真っ赤になるのほんと可愛いよな」

　自覚していた頬の熱を直球で指摘されて、ますます熱くなる。



　相馬に口で勝てるわけないのに、私はつい対抗したくなって、相馬のその飄々とした笑みを崩したくなって、わざと意地悪を言ってみる。

「い……いいの？　私の返事は素面で聞かなくて？」

「別に。俺が、酒に酔って適当言ったとか思われたくなかっただけなんで」

「……そう」

　相馬はまったく動じてくれなかった。