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unbalance
第31章 ラフロイグ

――ずるいよ。ずるい。
ほんと、嫌い。
ぜんぶわかってるくせに。
私が拒絶できないことなんてお見通しのくせに。
相馬があんな言いかたをするのは、きっと私の逃げ道を塞ぐ相馬の演技だと、わかっている。
わかっているのに絆されたくなる自分も、嫌いだ。
相馬についさっき触れられた手の甲を抱き締めるように、両手を胸の前でぎゅっと握った。
心臓がばくばく鳴っていた。
お手洗いの個室で、本来の用途をこなさずただ立ち尽くす。
鼻をすするとズッと音がした。
文句を言ってやろうと思っていた。
問い詰めてやろうと思っていた。
ありえないって言ったじゃん。あれは何だったの。
むしろ、三年前っていうのが嘘? なんでそんなバレバレの嘘つくの?
口を開いたら泣いてしまいそうで駄目だった。
思い返すたびにつらくなるのはわかっていながら、覚えていないと迷惑をかけてしまうから、キスとかハグとか冗談を言われる度に、勘違いしたくなってしまうから、何度も思い返しては自分に刻み込んだ、傷。
私は、ずっと――

