この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
unbalance
第31章 ラフロイグ
私はこぼれそうになる涙をぐっとこらえた。
深呼吸して、冷静になろうと試みる。
別に、悲しいわけではない。
怒っているわけでもない。
かといって、嬉し涙でもない。
ただ、なんで? とは思う。
なんであのとき、あんなこと言ったの?
人当たりがよくて、誰からも慕われて、誰かと対立している話も聞いたことがない相馬が、チームに入りたての私をあんなふうに言ったのは、なんで?
それとも、酷いと思ってるのは私だけ?
それとも、三年前から、というのがやっぱり嘘だった?
あのころは私のこと、そう思ってたってこと?
相馬は私の気持ちなんて見透かして余裕の笑みを浮かべるのに、私は相馬のことが何もわからない。
混乱して泣くなんて、まったく、子どもみたいだ。
あのお洒落なカクテルにはぜんぜん似合わない。じっと耐える。
ただひたすら耐える。深呼吸して、涙が引っ込むのを待つ。
いっそ相馬に真正面から聞いてみる?
少し考えて、聞くとしても今じゃないな、と私は結論を出した。
泣き出さずに質問できる自信がない。
やっぱりあのお酒、ちょっと強かったんじゃないの。