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第31章 ラフロイグ



 こぼれそうになる涙をぐっとこらえる。
深呼吸して、冷静になろうと試みる。

別に、悲しいわけではない。
怒っているわけでもない。
かといって、嬉し涙でもない。

ただ、なんで? とは思う。
なんであのとき、あんなこと言ったの? 
それとも、酷いと思ってるのは私だけ?



 相馬は私の気持ちなんて見透かして余裕の笑みを浮かべるのに、私は相馬のことが何もわからない。



 混乱して泣くなんて、まったく、子どもみたいだ。
あのお洒落なカクテルにはぜんぜん似合わない。
じっと耐える。
ただひたすら耐える。
深呼吸して、涙が引っ込むのを待つ。



 今日は、余計なことはしないで大人しくしていよう。
 相馬の言葉に、笑顔で頷くことさえできればそれで今日は合格だ。
疲れすぎているし、感情的になりすぎている。
あとのことはあとで考えよう。
それでいい。



 やっぱりあのお酒、ちょっと強かったんじゃないの。


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