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第31章 ラフロイグ



 私はこぼれそうになる涙をぐっとこらえた。

 深呼吸して、冷静になろうと試みる。



別に、悲しいわけではない。
怒っているわけでもない。
かといって、嬉し涙でもない。

ただ、なんで? とは思う。
なんであのとき、あんなこと言ったの? 
人当たりがよくて、誰からも慕われて、誰かと対立している話も聞いたことがない相馬が、チームに入りたての私をあんなふうに言ったのは、なんで?

 それとも、酷いと思ってるのは私だけ?

 それとも、三年前から、というのがやっぱり嘘だった?
 あのころは私のこと、そう思ってたってこと?



 相馬は私の気持ちなんて見透かして余裕の笑みを浮かべるのに、私は相馬のことが何もわからない。



 混乱して泣くなんて、まったく、子どもみたいだ。
あのお洒落なカクテルにはぜんぜん似合わない。じっと耐える。
ただひたすら耐える。深呼吸して、涙が引っ込むのを待つ。



 いっそ相馬に真正面から聞いてみる?

 少し考えて、聞くとしても今じゃないな、と私は結論を出した。
泣き出さずに質問できる自信がない。



 やっぱりあのお酒、ちょっと強かったんじゃないの。


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