この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
unbalance
第32章 目元

驚いているうちに相馬の顔が迫ってきて、咄嗟に目を閉じると、相馬は私の――目元を舌でなぞった。
「ちょ……っ」
「静かに」
相馬が、涙が通った跡と、それから目の下の、いちばん防備を固めてあるあたりを拭うように舐め取った。
声を出すと他のお客さんに聞こえちゃう、と思うと私は激しく抵抗できなくて、エアコンで冷まされた体が、相馬の熱い舌のせいでどんどん熱を帯びていく。
弱々しい力で相馬の胸を押し返すのも、ほとんど無意味に思えた。
「か、体に悪いよ」
相馬は私の抵抗を無視して、そのまま反対の目元も同じように舐め、ようやく顔を上げた。
「……霧野、」
頬に手を添えて、舐めたところを親指で撫でる。
「上手いこと隠すもんだね」
せっかく、こまめにお手洗いで隠し直していた青クマを、こんなふうに暴かなくったっていいじゃない。

