この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
unbalance
第32章 目元

と話し始めたはいいものの、説明しながら虚しくなってくる。
相馬は黙って聞いていた。
どうせやっぱり、何それ覚えてない、そんなどうでもいいこと気にしてたの、なんて返事が返ってくるのだろうと思った。
実際は、そうではなかった。
話すうちに、相馬はしだいに私から手を離し、隣に座ったまま今度は自分の頭を抱えた。
「霧野、聞いてたの……」
「覚えてるの?」
「覚えてるもなにも」
相馬が盛大に息をついて、手を伸ばして自分の席からグラスを取ると、ぐっと大きめに一口飲んだ。
「霧野」
徐に真剣な調子で名前を呼ばれてちょっと戸惑う。
「な、何?」
「舐めていい?」
え? ……あ、お酒の味見、かな?
「どうぞ」
私の飲んでいたコスモポリタンを相馬の前に置くと、
「ありがと」
相馬は私の頬に手を添えて、自分のほうを向かせた。

