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第33章 コスモポリタン



「俺、もう一杯飲んでいい?」

 相馬が対面の席に戻ろうとする。



「ま、待って! ちょっと待って」

 慌ててポーチを出して、壁を向きながら手鏡で目元のメイクを確認する。

「別に直さなくても可愛いよ」

 適当言えば許されると思うなよ!



 目の周りべたべたにしたまま人を呼ぶのはさすがに駄目すぎる。



 小さな折り畳みの鏡を覗き込む。マスカラは無事。
アイシャドウも消えかかっているけれど、汚くはない。
問題は目の下のベースメイクとコンシーラー。
油取り紙でなんとか肌を均して、クマを隠し直す。

白目が赤いのはどうしようもないけれど、少なくとも疲れて見えないように。泣き顔には見えないように。

誰かさんにここだけピンポイントでお化粧を舐め剥がされたなんて、決して見えないように!



「すげー、クマ消えた」

「見ないで!」



 はは、ごめん、と相馬は笑うけれど、こっちは冗談じゃない。
私がパウダーを閉じるのを見て、相馬が、もういい? と聞くので頷いた。



「注文お願いします」

 相馬がカウンターのほうに声を掛けると、はーい、とさっきのマスターさんの声が聞こえた。


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