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unbalance
第32章 記憶
「俺がいちばん霧野のこと好きだよ」
「……今までそんな素振り、ちっとも見せなかった癖に」
すると、相馬は目を丸くした。
「いや、めちゃめちゃしてただろ。キスしてくれたらー、とか」
「セクハラは含めません!」
含めないのかあー、と項垂れる相馬はまるで本気でがっかりしているようで、……え、まじで?
「……ほんとにあれでアプローチのつもりだったの?」
「わ、悪かったな、どうせ」
どうせ――本命だけには下手ですよ、と、むくれる相馬の声は小さくて、目を泳がせる仕草は何だか思春期の少年みたいで、あーあ、もう、許したくないのに許してしまいそうになる。
惚れた者の弱み、というやつか。
私はコスモポリタンの残りを口に含んで誤魔化した。