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第4章 視線



「早く、服を着ろ」



 俺は振り絞るように小綺麗な台詞を吐くと、霧野の脇をすり抜けて、クローゼットの扉を開けた。
クローゼットに体を埋めるようにしてドライヤーを発掘し、後ろ手で渡す。
もう霧野のほうを振り向くことはできなかった。



「……ごめん」

 ドライヤーを受け取る霧野の指が、俺の指に触れて、俺はびくりと過剰に反応してしまう。



「いいからさっさと乾かしてこい」

 俺はもう一切の余裕がなくて、それを繰り返すことしかできなかった。
霧野がお礼を言って、洗面所の扉を閉めるのを背後に聞き、俺はクローゼットも開け放したままその場にへたりこんだ。

心臓がいつもの二倍速で稼働していた。
それでも息苦しさは収まらなかった。


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