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unbalance
第4章 視線
ただ、
「霧野」
それはそれとして、ひとこと苦言は呈しておきたい。
「俺でよかったな。俺じゃなければ襲われてたぞ」
しばらく反応がなかった。ややあって、
「それって……」
霧野が何か言いかけて、そして続きが出てこないので、俺は逸らしていた視線を霧野に向けた。
霧野はシャツの裾をぎゅっと両手で握り締めたまま、俺を見ていた。ばっちり目が合った。
その目は少し赤かった。霧野は戸惑ったようにその赤い目を泳がせて、
「……何でもない」
結局、続きは聞けずじまいだった。聞き返そうとも思わなかった。