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unbalance
第35章 コンビニ

もうすぐ霧野がカクテルを飲み干す。
「今日、うち来るだろ?」
言いながらスマホで時間を確認する。
霧野の終電は何時だと言っていたっけ。
調べようにも、彼女の家の場所すら知らない。
いろいろ知っているつもりでいたけれど――まだまだこれからだな、と俺はスマホの画面を閉じた。
「え、えっと、ご迷惑じゃなければ……」
霧野が肩を縮める。いやいや、
「こんな時間から帰すと思ってんの?」
そう言うと、霧野はますます肩を縮めた。
ああ、そうか、
「何もしないよ、今日は。疲れてるだろ。
別に、もう遅いから泊まってけばってだけ」
霧野がようやく顔を上げる。
「……あ……うん……」
あれ? その心配をしてたわけじゃないのか?
「お邪魔、します」
なんか……他人行儀だ。
帰るの面倒くさいから泊めて、ぐらい、言えるようになってほしいものだけど。
霧野は対面の席で小さくなったまま、何も言わない。
こういう奴なんだ。

