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第5章 麦酒



 パンツだけ急いでドライヤーの熱風で乾かして、相馬が用意してくれた薄手のスウェットのズボンを履いて、ブラはTシャツの中に隠して洗面所を出た。
私のブラはパッド入りなのでそんなにすぐには乾かない。
バスタオルは頭から被ったまま、髪は濡れたまま。
あとは諸々リビングで乾かせばいい。
相馬にお風呂を明け渡すほうが先だ。

 恐る恐る、改めて部屋に続く扉を開けると、相馬は言葉少なにお風呂に出ていった。
いけないとわかっていながら、相馬のズボンが落ち着いたかどうかを確認してしまった。
元通りになっていた。

まあ、そうだよね。

ただの同僚があんな格好で出てきたら、たぶんきっと誰だってびっくりするし、そしてきっと、あんな格好で出てこられて、体がびっくりしただけだ。
男の子って、そういうもんらしいし。



 ――霧野? そういやあいつ、女でしたね。考えたこともなかったです。



 ずん、と、心に重くて太い針が刺さったようだった。

 その記憶が生々しく彼の声で脳内再生されて、ぎゅっと胸が締めつけられる。

うるさい。
私だってあんたなんか願い下げよ。

 でも、だからこそ、相馬が私であんな反応を見せたこと、一生覚えててやるんだから。
それで、ぜったい誰にも言わないけれど、一生、一人で勝手に優越感に浸ってやるんだから。


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