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第6章 睡魔



「相馬ベッド……私ここ……」

「ほんと強情だよな、お前」



 悪かったわね、可愛くなくて。

 という呟きは、現実のものだったかもはや判然としない。
夢の中だけで言い返したつもりだったけれど……あれ? 声に出てた?



 私の上に影が落ちたのが、瞼の裏の明るさでわかって、私は寝転んだまま瞼をこじあけて上を見た。
天井の明かりを背に、逆光の相馬が、こちらを覗き込んでいた。



「……相馬」

「……何」



 ねえ、どうしてそんなに優しいの。

 誰にでもそんなに優しくするの。

 誰にでも優しいんだったら――私にだって。



 私だって、自分が意地っ張りで甘え下手で愛嬌ないってわかってるけどさ。

 私が変に可愛子ぶってもただの痛い奴だってわかってるけどさ。

 だから、普段はぜったいに我慢してるけどさ。



 自分が魅力的なカラダしてないことはわかってる。
美人でもないし、性格も、女の子だって意識してもらえなくても仕方ないぐらい可愛くないって自覚してるけどさ。でも――、



 お酒のせいか、睡魔のせいか、判断力が鈍っていた。



 私だって、好きな人にぎゅってされたいときぐらい、あるよ。



 回らない頭のまま、私は欲求に任せて、相馬に手を伸ばした。



「相馬も一緒にベッドで寝るなら、いいよ」


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