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第7章 火種



 相馬の喉仏が上下したのが見えた。
その目ははじめて見る熱を帯びていて――いや、はじめてじゃない。
この目は、さっき見た。
さっき、お風呂上がりの私の体をなぞるように見ていた目。



 相馬、今、私のこと――意識してくれてる?

 女を見る目で見てくれてる?



 それは相馬と出会って一度もなかったことで、でもずっと私の奥底で燻っていた願望で、燻りすぎてもう枯れ果ててすらいたけれど、まだ火種は消えきっていなかったようで、睡魔より強く、私を圧していく。



「……あとで文句言うなよ」

 相馬の声は、さっきまでごはんを食べながら雑談をしていたときよりも、ワントーン低かった。

 相馬の手が私の髪を掻き分け、首筋に触れる。
くすぐったくて、肩をすぼめる。

もう片方の手が、腰に添えられたかと思うと、床と私の背中の間にぐっと入り込んできた。
私はちょっと体を斜めにして、彼の手を入りやすくする。
彼の指がやわくなぞったところから、ぞわぞわと痺れが全身を駆け巡る。

ん、と私の緩んだ口元から声が漏れた。


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