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第7章 火種



 彼が胸を合わせるように体を近づけたので、私は彼の首に両腕を回した。
そのまま肩と背中を支える彼の手によって、私は案外すんなりと持ち上げられて、すぐ隣のベッドの上に、静かに着地した。

「相馬、すごいねえ、力持ちだねえ」

「お前酔ってるだろ」

「酔ってな……」

 いや、

「うん、酔ってる」

 そう答えると、相馬が呆れたようなため息とともに私の頭を強めに撫でた。
私はじんじんとあったかい何かが全身に行き渡るのを感じて目を細めた。



「相馬」

「ん?」

 私、今、酔ってるから……、

 酔ってるから、いつもできないことしても、いい?



 私は相馬をぎゅっと抱き寄せた。
両腕を彼の背中に、両脚を腰に回して、まるで相馬にぶら下がるみたいに。

 相馬は耐えきれなかったようで、私の上にうつ伏せで落ちてきた。

「う、わ!」

 変な声を出しながら。
ついでに潰された私からも変な声が出る。
慌てて相馬が肘と膝で自分の体を支えた。

息苦しさから解放された私は、面白くなって声を出して笑った。



「……お前なあ」

「もっかい!」

 恥ずかしいとか迷惑だとか、そういうことが、すこんと頭から抜けていた。
睡魔のせいか、酒のせいか、それとも嵐のせいか。

なんだっていいか。


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