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第8章 返事



相馬は私の頬に手を添えたまま、指をゆっくり進め始めた。
まだ恐怖は抜け切れていなくて、頬を覆う彼の手に自分の手を重ねる。
温かい。
力を抜いて、落ち着いて、そうだ、そうすれば入る。大丈夫。



 指がゆっくり進んで、

「入ったよ」

 相馬が優しく微笑むから、余計に恥ずかしくなる。



 中が馴染むまで、相馬は待っていてくれた。
それからゆっくり指が動かされる。
探るように、痛くないように、ゆっくり少しずつだけ動いてくれる。
キツくて苦しいけれど、耐えられないほどではなかった。

これも彼の戦略なんだろうか。
このあと自分が気持ちよくなるために、今はうわべだけ優しくしてくれるんだろうか。

それでも構わない。
一生に一度、彼に使ってもらえるのなら。

 こんな夜が来るなんて、夢にも思っていなかった。
嘘。夢には思ったこともあった。夢の中だけだと思っていた。



「大丈夫?」

「へい、き、だってば」

 だから、相馬、お願い、好きにして。
私のことはどうでもいいから、だから、

「霧野」

 私のこと好きじゃなくてもいいから。

「……ん、」

「何も考えるな。俺が気持ちよくしてやるから」

 ……え、と聞き返す間もなかった。


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