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unbalance
第2章 傘立て
「お……終わった……!」
無限に思えた作業も、こつこつ進めていればいつかは終わるものである。
時計を見ると、十一時過ぎ。
全三十ページにわたるデータ分析資料が何とか完成した。
相馬に手伝ってもらってこれだから、一人でやっていたら、やっぱり終わってなかったかもしれない。
悔しいけれど、今回は――助かった。
隣で相馬が、気の抜けた拍手とともに、おめでとう、と相槌を入れてくれた。
「ちゃんと保存しろよ」
「わかってるよ。保存もするし、今すぐ部長に送りつけてやる」
「おー、いいねえ」
相馬が机の上を片付け始める。ずいぶん資料を広げてしまった。
「相馬……ありがとね、遅くまで」
相馬に頼んだのはデータ探しとかグラフ作りとか、本当に細かいことばかりで申し訳なくなってくる。
けれど、そういった細かい作業に案外時間も脳内リソースも使っているもので、それを一切丸投げして、資料の目的だけに集中できたというのは、本当、感謝でしかない。
「いつになく素直じゃん。どした?」
「うっさ。私だってお礼ぐらい言うわ」
彼のことは苦手だし嫌いだけれど、ここでお礼も言わないなんて非常識な人間ではないつもりだ。