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第2章 傘立て



「しっかしそれはそれとして、霧野はもうちょっと手を抜くことを覚えたほうがいいな」

「うっさ! それこそ……」



 余計なお世話、というか。

 もう知っている、というか。



 仕事が断れない自分も、手を抜くのが下手な自分も嫌だった。
けれど、仕方がないじゃない。それしか方法を知らないのだから。
私は彼みたいな、要領のいいキャラじゃない。
今から頑張って、そうなれるとも思わない。

 きっとそもそも彼と私は、住む世界が違うのだ。
ただ仕事だから関わり合うこともあるだけで、本来だったら言葉を交わすこともないような人。

 自分が、つまらない女だと思われているのは知っている。
いや、女だとすら思われていない。
つまらない、残業ばかりしている、資料ばかり作っている――



 うるさいうるさい。
わかってるよ、自分が可愛げのない真面目ちゃんだってことぐらい。



「何してんだよ。帰るぞ」

 相馬の声に、私ははっと我に返った。


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