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第11章 奇跡



 朝六時の青空の下、よく知った街のよく知らない道を、日焼け止めも塗らずに私は歩いた。

昨夜は訳もわからずついていくだけだったけれど、相馬の家は会社から駅とは逆方向だった。
オフィス街だと思っていたのに、駅から離れると意外と住宅街ばかりだということをはじめて知った。
電車は、まだダイヤが乱れていたけれど動いていた。

 自宅に帰って扉を閉めた瞬間、道中ずっとこらえていた涙が堰を切ったように溢れてきた。

 もうだめだった。

 泣いた。ただ泣いた。

 泣いて泣いて、私が何もせずに泣いているだけでも、時間は無慈悲に過ぎていくことを知った。

泣いて、泣き疲れて寝て、
起きてまた泣いて、
泣いて、泣いて、
ひたすら泣いた。



気づいたら週末が終わっていた。

涙はもう枯れていた。


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