この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
unbalance
第11章 奇跡
好きだ、私、相馬のことが。
「お世話になりました!」
私は思い切り頭を下げて、
「あと、その……昨夜はごめんなさいっ」
それだけ言って、家を飛び出した。
失礼な態度だった。
でもこうするよりほかなかった。
挙動不審だと思われただろうか。
哀れな奴だ、ぐらいに思っているかもしれない。
面倒な奴だと思われたかもしれない。
相馬のアパートを出たところからは、できるだけちんたら歩いていたのだけれど、相馬は追っては来なかった。
追って来ないかと、ありもしないことを勝手に期待して、そして一人で勝手に虚しくなっていることが虚しかった。
玄関であんなにだらだらしたのも、こんなにゆっくり歩いているのも、
ぜんぶ、叶いもしない期待をまだ引きずっているからで、
そしてやっぱり叶わないという現実を突きつけられて、私の精神はズタボロだった。