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第11章 奇跡



 好きだ、私、相馬のことが。



「お世話になりました!」

 私は思い切り頭を下げて、

「あと、その……昨夜はごめんなさいっ」

 それだけ言って、家を飛び出した。



 失礼な態度だった。
でもこうするよりほかなかった。
挙動不審だと思われただろうか。
哀れな奴だ、ぐらいに思っているかもしれない。
面倒な奴だと思われたかもしれない。



 相馬のアパートを出たところからは、できるだけちんたら歩いていたのだけれど、相馬は追っては来なかった。
追って来ないかと、ありもしないことを勝手に期待して、そして一人で勝手に虚しくなっていることが虚しかった。

玄関であんなにだらだらしたのも、こんなにゆっくり歩いているのも、
ぜんぶ、叶いもしない期待をまだ引きずっているからで、
そしてやっぱり叶わないという現実を突きつけられて、私の精神はズタボロだった。


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