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第12章 回想 不均衡



 去年の四月のことだった。



 期の区切れ目でたくさんの人事異動が同時にあったので、営業部の中の私が入った新しい課でも、全体で歓迎会と送別会をした。
私一人に白羽の矢が立つこともなくてほっとしていたのに、一か月ほど経ったころ、うちのチームのリーダーが、まだチームだけで霧野の歓迎会をやってなかったなと言い出した。

「そういやそうっすね」

「よし相馬、幹事やってくれ」

「承知でーす」



 今さらだ、と思った。

私の仕事のやりかたは、そろそろバレ始めていた――営業のくせに人と話すのが下手なことも、なかなか外出したがらないことも、馬鹿みたいに残業することも。
人選を失敗したと思われていないかひやひやしていたので、まだ一応歓迎されていることに安堵しつつ、しかし、面倒だなと思ったのも事実だった。

飲み会なんて、人生で苦手なものトップスリーに入る。
ましてや、知り合って一か月の年上男性ばかりなんて。



 先輩たちもチームリーダーも、悪い人じゃないのはわかっている。
部長みたいな無茶ぶりをする人もいない。

けれど、仕事の関係は仕事の関係だ。

まして、私は新入りの後輩。
私の歓迎会と言ったって、好きに飲み食いできるわけでもなければ、したい話ができるわけでもない。


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