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第12章 回想 不均衡



 だからといって――結構です、などと言えるほど、私はメンタルが強くなかった。
にっこり笑ってありがとうございます嬉しいです、それで世間は上手く回る。
あとは居酒屋で数時間、我慢して座っていればいいだけだ。



 一週間後、駅前の綺麗めな洋風居酒屋の最奥の個室で、私の歓迎会の名を冠した飲み会が開催された。
私は最初にビールを一杯だけ飲み、あとは烏龍茶ばかり注文していた。
メンバーは八人程度で、相馬と私が最年少だけれど、割と平均年齢は若くて、二十代や三十代前半の先輩も多い。

 相馬が斜向かいの席で、大皿の料理をさっと取り分けて配る。

しまった。
あれ、いちばん下っ端の私の仕事じゃない? 

配属されて早々印象悪くしたくない。
私も相馬が配っている隣の大皿に手を伸ばす。
動かなきゃ。働かなきゃ――。



「危ない」

 はっと気づくと、相馬がトングを持ったままの腕をこちらに伸ばし、私の腕を止めていた。
私の腕の向かう先には、先輩のグラスがあった。青ざめる。

「霧野」

 真っ白になりかけた思考を現実に引き繋いだのは、相馬の声だった。

「何やってんだよ」

「……ごめんなさい」


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