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Memories-あの日のあの人は
第6章 まさか
彼が向かう先に居たのは、樟蔭中学の女の子。当然、高校生になっていた。

深緑の特徴的なセーラー服に深緑の革鞄だったと思う。違ったかもしれない。今となっては記憶が混濁している。

彼が近づく。私は足を止めて、守衛室の後ろで立ち止まった。

樟蔭高校の女の子の声が聞こえた。

「久しぶり…。あ、会いたかった」

私が見たのは、『彼』に抱き着く、樟蔭高校の女の子の顔と、『彼』の背中。その背中には、樟蔭のセーラー服の深緑が見えたように覚えている。もしそうだとしたら、腕を回したということ。

『彼』が女の子の肩に手を乗せて、離した。さすがに、人目がないとは言えない場所だから…。そうよ。ここは、清風高校の庭。

と、私は思った。でも、違った。『彼』が、女の子と距離を取ったのは、顔を見るため。そして、キスをするためだったと、私は思っている。実際には、わからないけど。

私は、嫉妬したのかもしれない。

思わず、私は、守衛室のところから、円形校舎の裏庭に、小走りに走り出した。

私の存在に気が付いた、樟蔭高校の女の子は、『彼』から離れた。『彼』が私の方を見た。視線があった。

その目が見開かれた。その目が、「いつもの」という感じだった。

終わった。私はそう思った。

『人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて』じゃなく、『彼』に蹴飛ばされるだろうと思った。実際に蹴飛ばすことはないけど、二度と、会うことはないと思ったわ。

久しぶり…そう、一年以上、会えなかった2人が、会った。その機会を邪魔した…。

樟蔭高校の女の子は、私のことは知らないみたいだったから、単なる通りすがり。


バカなことをしたと後悔したけど、『後悔先に立たず』

清風からの帰り道、友達は、私の異変に気が付いたのか、心配してくれた。でも、話していいのかどうか迷った。

そして、結局、話さなかった。
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