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Memories-あの日のあの人は
第7章 駅のホーム
いつもの時間、いつもの車両…

で、いいの?と思った。

でも、改札を通ってしまっていた。いつもの場所に『彼』がいた。

素通りしよう…。

そう、思ったのに、『彼』が、素通りしようとした私に、まるでタクシーを止めるように、右手を上げた。

え?

私は『彼』を見た。表情は、間違いなく、笑顔。

「この間は」

と、『彼』が言った。ドキドキした。

「ありがとう」

と、彼は言った。あ・り・が・と・う???

意味がわからなかった。

もしかして、樟蔭高校の女の子のこと?

え、キスの邪魔をしただけ…。困惑する私の顔をジッと見て、『彼』が破顔した。

「わけがわからないみたいだね」

と、笑う。わかるわけがない…。『人の恋路を邪魔する奴』だったはずの私。

「キミが通って、その後ろから」

と、『彼』が言った。

「後ろから?」

と、訊くと、

「生活指導の鬼が来た」

と、彼が笑った。清風の生活指導は怖いと聞いていたから、確かに、あのまま、樟蔭高校の女の子とキスはともかく、抱き合っていたら…。

「そういうこと」

と、私が言うと、

「禍福は糾える縄の如し」

と、『彼』が笑った。

そして、背後に気配を感じた私が振り返ると、そこに、

樟蔭高校の女の子がいた。そして、もう一人、歩いてきて、私に声を掛けたのは、私と同じ制服。四天王寺高校の制服を着た女の子。

え?プール学院中学の女の子だった。

「普通科だけど、同じ学校に通っているのよ。気が付かなかった?」

と、笑った。今なら、皆でLINE交換でもするのだろうけど、そんなものは無かった。

でも、同じ電車、同じ車両、同じ扉から、乗る日々が続いた。

高校卒業まで。

そして、今、みんな、いい年になったはず。

高校時代の私たち、清風、四天王寺、樟蔭の4人。男1人と、女3人の物語。

興味があれば、次作『SSS-EX』を読んでくださいね。
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