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華蝶風月
第9章 風子2
くそぉ!
小手を打たれて取り落とした竹刀を拾うと中段に構え直す。
獅子頭家の片隅にある板敷きの武道場に怪鳥の咆哮が響く。
キェェ!
精一杯の威嚇もどこ吹く風と大上段に構えたまま流されてしまう。
なんなのよ!
普通上段なんて小兵の使う構えじゃない。
大柄な選手が気合で相手を押し負かさんとする火の位だ。
それを獅子頭百華は僅か160cm程の短躯で微風みたいな優しい大上段を構える。
威嚇の声もない。
ただ静かに構え私の出方を伺っている。
舐めるなよ。
狙うは逆胴。
左足で床を蹴り身体を前に飛ばす。
「どぉー」
丸空きの胴めがけて竹刀を一閃
する前に頭に強い衝撃を受けて意識が落ちる。


気が付いた時には防具は外され紺色の道着袴のまま道場の床に寝かされていた。
また一本も取れずに負けた。
悔しさでどうにかなりそうだ。
「気が付いたか?」
ダミ声に顔を向けると防具を外した小父さんが心配そうに覗き込んでる。
「う、うん。」
特にどこも痛くない。
ヨッコラショ
身体を起こそうと動いた時
「ウワァ〜!待て待て!」
悲鳴を上げながら小父さんが背中を向ける。

何?
「服、服!」
服?道着がどうかした?
と、視線を下に移動させ・・・
「キャ〜〜〜〜〜〜〜!」
自分でも驚くくらい甲高い悲鳴を上げる。
道着の胸紐と袴帯が緩められ大きく開けた道着と袴の下のスポーツブラと小さなリボンが付いてる水色のパンティがはっきり見えている
「な!な!な!」
手で身体を隠しながら詰問しようとするが動転していて言葉が出てこない。
「倒れた時息が苦しそうだったから緩めたんだ。他意はニャイ!」
普段からは信じられない程の早口。
オマケにかんだ!
まるで同級生の着替えを見てしまったラブコメ漫画の主人公だ。
可笑しい。
小父さんってこんなに可愛い感じだっけ?
こみ上げてくる笑いを噛み殺しつつ着衣を直しながら丸くなった背中を向けてる小父さんを見る。
月ちゃんが「クマさんみたい」と言っていたのも合点がいく。
「こっち見ていいよ。」
許可すると身体はこちらに向けても顔を上げようとはしない。
「本当にごめん。」
やだ、まだ謝ってる。
「中学生の色気ない裸見たくらいで大騒ぎし過ぎだよ。」
カラカラ笑って小父さんの肩をポンポン叩く。
漸く頭を上げた小父さんのはにかんだ笑顔。
ドキン!
心臓が大きく脈打つ。
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