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華蝶風月
第4章 月子
毎朝の様に今朝もノック無しでドアが開く。
「月ちゃんご飯だよ!」
これも風子姉さんのお約束の台詞。
「ハァ〜イ。」
生返事しながらランドセルを手に持つ。そうそう、今日の体育はプールだから水着忘れないようにしないと。
階段を降りキッチンに行くとすっかり朝食の準備は出来上がっていた。
バターロールパン2個
パンのお供はバターかイチゴジャム。
小さなオムレツとウインナー。
レタス中心のサラダ。
私と風子姉さんには牛乳
蝶子姉さんと百華さんにはコーヒー。
今日も美味しそうだ。
「いただきます!」
ロールパンを半分に千切ると断面にバターをたっぷり塗った上からジャムを垂らす。
こうすると甘いジャムに塩味が加わって美味しさが倍増するのだ。
「また!そんな食べ方してると肥るわよ。」
今日も蝶子姉さんのお小言。
「大丈夫。今日プールでいっぱい泳いでカロリー消費して痩せるから。」
「それより昨日結構遅くまで小父さんゲームに付き合わせてたけど宿題はすんでるの?」
「大丈夫。ゲームの前に百華さんに教えてもらって全部済ませたから。」
「月子、あんまり小父様に迷惑かけたら駄目よ。」
「俺がなんだって?」
少し聞き取り辛いダミ声。
廊下をのっそり歩いてきまだ眠そうに半開きの目の百華さん。
少し小柄で小太りの身体を揺らしてのんびり歩く姿は何となく有名な黄色いクマさんを思い出させる。
「百華さんがゲームは下手だけど勉強教えるのは上手いって話。」
「ありがとさん。でもゲームは俺が弱いんじゃなくて月子ちゃんが強すぎるんだよ。」
肉厚の掌で私の頭を1、2回撫でてから席に座る。
風子姉さんはいい顔しないけど私は百華さんに頭撫でて貰うのは好きだ。
「小父さん、セクハラ。それより今日こそ一本取るからね。」
「大した鼻息だけど寝言は寝て言いな。」
完全に小馬鹿にしてる。まあ、この半年ほぼ毎日対戦して一本も有効打をとれてないのだからしかたない。
「小父様、コーヒーです。」
蝶子姉さんのマグカップにコーヒーを注ぐ手が少し震えている。
イケメン好きの蝶子姉さんから見たら百華さんの容姿は・・・かも知れないけど毎日毎日毎日の異常な迄の緊張感には違和感がある。
「月子ちゃん、今日こそゲームで勝つからね。」
「寝言は寝て言って下さい。」
「一本取られたな。ハハハハ。」


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