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幻影の胡蝶 〜桃源郷の寵妃達〜
第3章 四神の最高位【玄武】
つまり胡蝶は、あんな思いをして手に入たのに、価値の無い玉を受け取ったのだ。

その事実に胡蝶の眉間に皺が寄った。






「はっ、面白い顔するね。」

ムスッとして玉を見つめている胡蝶を、玄武は笑って言った。






ここの女人は、四天王に好かれる為に、良い顔しかしないのだが、あからさまに朱雀に不満の顔を見せる胡蝶が、玄武には面白かった。






「朱雀を怒らないであげて。俺達は独占欲が強いんだ。」

ポンと胡蝶の頭を撫でながら玄武は言った。

あまり男性に面識の無い胡蝶はそれだけで顔を赤める。






「自分が少しでも愛した女人は、転生も蘇りもして欲しくなくて、桃源郷に残って貰いたい。
だから胡蝶が蘇ったのは本当に稀な事なんだ。」






そう胡蝶を語る玄武の目が少し伏せられた。

「俺達四神でも、人を蘇させる事は簡単じゃ無い。
その為、俺ら4人の気持ちが無いと蘇る事は出来ない。」






悲しそうな顔を見せる玄武に、胡蝶はしばらく声をかけれなかった。

だけど我慢出来ない気持ちはある。






「…それと…朱雀様が私を弄んだ事は何が関係しているんですか?」

「ふはっ!弄ばれたって…。」

何をされたのだと、好奇心旺盛に玄武は笑って見せた。






ムッとしたままの顔で、胡蝶はそれ以上何も言わなかった。

玄武はそんな胡蝶を見ながら、笑いを堪える為に口元に拳を作って堪えていた。






「俺達の気持ちを込めたと言ったでしょ?【胡蝶】は持って行ってしまったんだよ。俺達の『最愛の気持ち』を。」






最愛の気持ちを受け入れて貰えなかった彼らは、その代償として、その痛みを一生忘れる事は無い。

胡蝶はあの瞬間に、四神の唯一無二の『最愛の女人』に成ったのだ。

それは彼らにとって長い命の中で生涯【胡蝶】だけ。






愛する人も居ない中、彼らは最愛の女人を無くした失意の気持ちだけを、生涯味わう事になった。




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