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幻影の胡蝶 〜桃源郷の寵妃達〜
第8章 春を司る蒼龍【青龍】…※











忙しいお昼の時間を捌いた歌姫は、周りの子達を休ませて、夕食の下拵えを自分1人でしていた。




別にその処遇を不満に思った事は無い。

むしろこうして厨房を回している方が、歌姫の性には合っているからだ。




1人で厨房で仕事をしていると、その様子を伺う様に青龍が厨房に入ってきた。

歌姫は手を止めると、青龍の方に体を向けた。




「…胡蝶…って奴が俺の部屋に来た…。」

そう言った青龍の顔は、何処か悲しそうに…。
少しの怒りの色が見えた。




きっと四神達にこんな顔をさせれるのは。
やっぱり唯一『胡蝶』だけなのだろう。




名前だけ…。
たったその呼び名だけでこんな表情をするのか。

歌姫は顔を顰めている青龍を見て、静かに息を吐いた。




「……青龍様…。」




普段の戯れなら、歌姫は仕事を放棄して青龍を慰める事はしない。

だけど、今の青龍のその表情は、自分に癒しを求めている。
自意識が大きいのでは無くて、青龍の顔がもうそう言っている。




歌姫は青龍の顔に手を伸ばした。

「……名前だけじゃないですか…。」

実は彼に【胡蝶】の名前の彼女を差し出したらどうなるか…。
そんな打算はあった。



だけどそれを後悔するには短い時間だった。

たった【胡蝶】の名前だけで。
愛しいその男はこんな表情を自分に見せるのだから。



「…貴方が嫌なら、また胡蝶はそちらに行かせません。」



青龍の気持ちが知りたかった。

胡蝶がいなくなって、青龍の寵妃は自分だったから。




本当はもうなんでも無かったと。

そんな青龍の姿を望んでいた。




歌姫の手が頬に触れて、青龍は目をそっと伏せた。

望んでいなかった青龍の仕草に、彼を確かめた歌姫の心が痛くなった。



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