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幻影の胡蝶 〜桃源郷の寵妃達〜
第4章 美しき桃源郷
人集りは多いのに、胡蝶から滴る水が木の床に落ちる音が聞こえる位に、その場は静まり返っていた。

その場に居た全員が胡蝶と鶯の動向を伺って居た。






「……私は桃源郷に来て間もないので、ここの事はよく分かりませんが……四天王様に会っただけでこんな洗礼を浴びなければいけないのですかね?」

胡蝶が鶯を見据えながら言うと、鶯はハッと乾いた笑みを浮かべた。






「普通はこんな事しないけど、あんたは別。
玄武様はともかく、朱雀様には屋敷に忍び込んだっていうじゃない。」

鶯がそう笑って言うと、集まっていた女人達からも声が漏れ始めた。







「忍び込んだって何?」

「まさか、そんな非常識な事して朱雀様に会った訳?」






聞こえてくる声は胡蝶には否定的な言葉ばかりだった。

急にざわめく周囲の声は、水を掛けた鶯より、胡蝶を責める言葉ばかりで、鶯は更に口角を上げる。






その状況の中、胡蝶は張っていた肩の力を抜いて、大きく息を吐いた。

胡蝶が声を出そうとした時、周りから一際大きな声が聞こえた。






「鶯!!」

人集りを割って2人が居る中心に来たのは舞鶴だった。

舞鶴は周囲の女人とは違い、その険しい顔は鶯に向かっていた。






舞鶴の登場に、鶯は舌打ちして嫌な顔をあらわにした。

「あんた!またこんな揉め事起こしていい加減にしなさいよ!!」

鶯は持っていた布を胡蝶の頭に掛けると、垂れている水を拭いた。







「……………。」

鶯に対して怒りながら自分を拭いてくれる舞鶴を見て、胡蝶は少し怒りが和らいだ気がした。






「どいてなさいよ舞鶴。この不祥事は胡蝶をちゃんと教育出来てないあんたの責任でもあるんだよ。」

鶯は腕を組みながら、舞鶴に向かっても同じ怒りをぶつけていた。



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