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幻影の胡蝶 〜桃源郷の寵妃達〜
第4章 美しき桃源郷
玄武から香る麝香の香りと、目の前のタトゥーに目眩がした。

頭を痺れさせる様なその目眩に、思わず彼にもたれ掛かりたくなる。






「…話は俺の部屋に行ってから……ね?」

見上げた玄武の顔はいつも通りの優しい顔だった。






あの一瞬体を縛る様な刺激を見せたあの目線は、一体なんだったのか…。

少し戸惑いながらも、胡蝶はゆっくりと頷くと、玄武に導かれるままに彼の屋敷に向かった。






「玄武様!!」

「…………………。」





彼の屋敷に着くと、待ってたとばかりに女人達が玄武を囲んだ。

胡蝶はその勢いに、思わず玄武から離れた。






「今日は朝から何処に行ってたんですか?」

「お会い出来なくて寂しかったです!!」






玄武の腕や体に複数の女人が巻き付き、彼を質問攻めしていた。

「ごめんねー…、新しい子が入って来たから気にしてて。」

玄武がそう言うと、一斉に女人は胡蝶を見た。






……今やっと認識したの?

玄武の言葉で女人達はやっと胡蝶を認識した様だ。






「…あら、この子随分と濡れてますね。」

「ちょっと下の者達の屋敷で色々あってね…。」

玄武の言葉に察した様に、女人達は胡蝶を憐れみの目で見てきた。







同じ女人の集団でも、下の者達の屋敷の女人とは随分と雰囲気が違う。

濡れている胡蝶を気遣う様な彼女達に、胡蝶はそんな印象を受けた。

なんと言うか、ここの女人は『余裕』がある。






舞鶴の様に渇いた布で胡蝶の事を拭いてくれる女人達に戸惑いながらも、胡蝶は嫌な気持ちにはならなかった。






「ちょっと、胡蝶と話がしたいから俺の部屋は人払いしてくれる?」






そんな女人達と胡蝶を見ながら玄武は言った。

『人払い』

一瞬ドキッとした物言いだったが、やはりここの女人達は「はーい。」と可愛いらしい返事でささっと玄武から離れて行った。



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